浅田久美さん

浅田久美さん

女子ウェイトリフティング競技の第一人者として牽引してきた浅田さんの競技人生と、その後の指導者としての人生を振り返ると、スポーツとはどんな関わり方だったのでしょうか?―

厳しさの向こう側にあるもの

選手時代は「人生80年の中、約10年の競技人生。この間はとにかく必死に、取り組もう」という思いでいました。国内に敵がいなかったので、目標は自分で設定し、甘えは許されません。自分にも厳しかったですが、他人にも厳しかったです。当時は埼玉栄高等学校で教員と選手の二足のわらじ。たとえ生徒であっても練習中は気安く寄ってこられるような雰囲気はつくりたくありませんでした。

指導者になってからは“ ほめてのばす”という指導よりも、選手の足りない部分を厳しく指摘して、その壁を選手と一緒に乗り越えるような指導を行っています。やり方は違っても、選手の力を伸ばしてやりたい、勝たしてやりたい気持ちは同じです。たとえその時にわかってもらえなくてもいい。何年後かに「あの時の厳しさは、実はこういうことだったんだ」と選手が思ってくれればという気持ちです。

「他人に厳しく、それ以上に自分に厳しく」…私の“ 凜”とはまさにこの姿勢をつらぬくことではじめて見えて来るものです。

競技生活、大事に一途に

選手を引退して改めて「人生80年として競技を終えて、実はまだ50年もある自分の人生」に気づいたんです。客観的にみれば、アスリートとしての10年よりもはるかに長い。むしろ、これからの生き方こそ、大切にしていきたいと思いました。結局のところ「スポーツが人生」のような生き方をしていますが、後進の指導は相変わらず厳しく(笑)、「人生の中のたった10年間の競技生活、大事に一途に」と伝えています。

 

「厳しさの中にある真の優しさ」が強さにつながるわけですね。最後にスポーツに親しみ、愛する人たちに向けてメッセージをお願いします。―

私は“ 男性のスポーツ”と言われてきたウェイトリフティングをやってきた身だから言えるのかもしれませんが、「スポーツに性差はない」と言いたいです。イメージが男性、あるいは女性と強いだけで、男性の新体操競技も、女性のウェイトリフティングも、魅了されるものがあります。また、スポーツには「裏の駆け引き」が必ずあります。そんなスポーツの奥深さを知ると、観戦の仕方にも深みが増し、スポーツをすること・観ることがもっとおもしろくなると思います。

Profile

浅田久美(あさだ くみ)旧姓・長谷場久美(はせば くみ)東京女子体育大学卒業。学生時代は、陸上競技部に所属(投擲)。卒業後、高等学校の保健体育科教諭として勤務しながらウェイトリフティングの選手として、全日本選手権12連覇を含む13回優勝、世界選手権大会には10回出場(銀メダルを3 度獲得)など活躍。引退後、指導者の道を歩み、後進の育成に力を注ぐ。2004年アテネオリンピック、08年北京オリンピックではウェイトリフティング女子日本代表の監督を務める。現在は、珠洲市役所福祉課に勤務。