学長より ~平成22年度卒業生のみなさんへ~
記事公開日:2011.03.20
過日発生いたしました東北関東大震災では、不幸にも多くの方々が犠牲になりました。現在も行方のわからない方々がたくさんいらっしゃいます。本学でも被災した学生がおり、また家族や親戚、友人などが被災したという学生もおります。幸運にも本学の学生に命を落とした者はありませんでしたが、多くの関係者が今なお肉体的にも精神的にも辛い思いをされています。被災した方々には心よりお見舞い申し上げ、一刻も早い復興をお祈りいたします。
このような事情により、平成22年度の卒業式は中止せざるを得ませんでした。これは、教育研究機関として卒業生、保護者、来賓の皆様の安全を最優先に考えた上での決断です。何とぞご理解を賜りますようお願い申し上げます。卒業生の皆さんの門出を祝うセレモニーを執り行えないことは実に残念でなりませんが、皆さんのこれまでの努力をたたえ、新たな旅立ちを祝う気持ちに変わりはありません。この場をお借りして、卒業式で皆さんにお伝えしたかったことを申し述べさせていただきたいと思います。
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんのこれまでの2年間、または4年間には、苦しかったこと、楽しかったこと、悲しかったことなど多くの出来事があったことでしょう。その1つ1つの経験が皆さんを成長させてくれたことと思います。ここに卒業を迎えられることは、先ず皆さんの努力があったからだと思います。しかし、その努力だけでここまでたどり着いたわけではありません。人間はたった1人で成長していくことができません。生まれてくることも、歩くことも、話すことも、さらには学校教育を受け大学や短大を卒業することも、皆さんの努力を誰かが何処かで支えてくれた結果なのです。このことを忘れないでください。また努力することができた背景をよく考えてみてください。
先ず第1に、皆さんをこれまで育ててくださったご両親やご家族のことです。いつも深い愛情で見守り、精神的にも経済的にも支えてくださったことでしょう。日常生活では当たり前の事として見過ごしてしまいがちですが、この機会に家族のありがたみをよく考えてください。
第2に、小学校、中学校、高等学校を含めた恩師の存在です。担任としてあるいはクラブの顧問として、皆さんを支えて下さったことでしょう。時には厳しく、時には優しく接してくれたことと思います。その影響は計り知れず大きかったことがわかると思います。
第3に、強い絆で結ばれた仲間たちの存在です。皆さんには支え合った多くの仲間がいましたね。勉学、スキーや水泳の学外実習、クラブ活動など、いつでもあなたの周りには仲間がいたはずです。挫けそうになったとき励まされ、相談に乗ってもらい、喜びを分かち合った仲間たちです。これからは、その仲間たちとは別々の世界に進みます。お互いの大切さを忘れることなくそれぞれの道で頑張り抜くことを誓い合ってください。
私も本学の卒業生です。藤村中学、藤村高校、東京女子体育大学での教育を受け、本学に勤務して45年が経ちます。本学の創始者である藤村トヨ先生には、小学校6年生の運動会で1度だけお目にかかったことがあります。中学に入学したときの校長は、その後本学学長となる伊澤ヱイ先生でした。また、卒業式にご来賓としてご出席いただく予定だった田川典子先生も本学の卒業生であり恩師の1人です。また同窓生の吉野みね子先生には、いつも仲間として支えていただいております。
今日、私がこのような立場で皆さんにお話しする機会をいただけるのは、これまで私を導き支えてくださった皆様のお陰なのです。心から感謝しています。皆さんも自分を支えてくださった方々への感謝の気持ちを忘れないでください。卒業生の皆さんは、これからの生活に胸を張って旅立ってください。卒業は次の生活への出発になります。それぞれの進む道は違っても、東京女子体育大学および東京女子短期大学で学んだことを誇りに思って頑張ってください。
先日、私は児童教育学科のオペレッタを拝見しました。このオペレッタには毎回感動させられますが、今年も大変素晴らしかった。仲間たちと工夫を凝らし、猛練習した成果は観衆に涙と笑顔をくれました。皆さんの努力は、人に感動を与えることができるのです。どうぞ自信をもってください。苦労や葛藤を乗り越えた先には、人との関わりのなかに大きな喜びがあるのです。
皆さんは、体育が好き、スポーツが好き、人間が大好きで本学を選ばれたことと思います。本学で学んだことを生かし、本学の建学の精神である「心身ともに健全で、質素で誠実、礼儀正しい女子体育指導者」になってください。皆さんのこれからの活躍を期待してやみません。どの道に進んでも仲間を導いてください。相手の立場になって考えられる優しいリーダーになっていただきたいと思っています。
これから皆さんと私は同窓生です。いつでも「こんにちは」と大きな声で挨拶してください。本学を卒業した人たちは、いつまでも学風から学んだ価値を共有する仲間なのです。卒業生としての誇りと同窓生としての一体感を忘れずにいてください。そして本学を温かく応援してください。皆さんの後輩や教え子たちを本学に新しい風として送り込んでください。心よりお待ちしています。
終わりに、保護者の皆様にはこれまでのご助力に心より感謝申し上げます。私たちの大学は女子の私立大学として、在学生はもとより卒業生の大切な母校となります。私たち教職員は、本学を預かりこれからも教育と研究に情熱を傾けて参ります。今後とも本学へのご支援を賜りますようお願いして、学長からのメッセージといたします。
平成23年3月20日
東京女子体育大学
東京女子体育短期大学
学長 加茂 佳子
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