【110周年特別企画】東女体大とスポーツと私(大石 千歳)
記事公開日:2012.10.17
本学は今年で110周年を迎えました。
それを記念し特別企画として、教職員からメッセージをお送りいたします。
テーマは【東女体大とスポーツと私】
第7回 大石 千歳准教授(専門:心理学)
私は教職担当として体育大学で心理学を教えていますが、小さいころから体育が苦手で、小学校時代には翌日の体育の授業が雨でつぶれるように、てるてる坊主を逆さ吊りにしたこともありました。そんな私が、縁あって本学の教員となったのは、「体育が苦手な生徒の気持ちが分かる先生を育てる」という使命があってのことでしょう。
学生時代に家庭教師のアルバイトをしましたが、自分が得意な英語では、生徒が何をわからないのか、なぜ出来ないのか理解できず、指導が難しかったことを思い出します。「自分が得意なことを苦手としている人」を理解するのは、たやすいことではありません。そこには、専門的な知識に加えて「自分と違うものを受け入れる」「思い通りにならない相手を許す」という深い人間性が必要となります。そういうことを伝えるのが、本学における私のミッションであると思っています。「できなくても手を抜いているわけではない」と、ちゃんとわかってくれた体育の先生もいました。そんな時には「この先生が頑張れというのなら、頑張ってみようかな」という気持ちになったものです。皆さんもそんな体育の先生になってください。心理学の立場から応援しています。
また、本学と私には以下のような不思議なご縁もありました。高校生の頃、細かいことを悩むのを克服したいと思っていたところ、心理学の世界に「森田療法」というものがあることを知りました。悩みは心の中に「あってはならないもの」ではなく「あって当然のもの」であるから、排除することなく「あるがままに」受け入れるというのです。お小遣いで森田療法に関する本を買って読み、そこから大学では心理学を専門的に学んでみたいと思うようになり、現在に至っています。その本は末期がんで死期が迫る精神科医が、森田療法の「あるがまま」を実践しつつ最期に遺した本でもありました。
この森田療法を創始した森田正馬先生は、禅や東洋の思想を心理療法に取り入れたことで世界中に名を知られるようになりましたが、何と本学(私立東京女子体操音楽学校)の心理学の先生であったことがあるというのです。私は本学の開学110周年記念誌の編集委員として、本学の歴史を勉強する中で、この事実を知りました。森田正馬先生と藤村トヨ先生は親交が深く、森田先生は設立当初の経営が苦しかった本学で、無給で教壇に立って本学を支えてくださいました。森田正馬先生と藤村トヨ先生に関しては、『気骨の女: 森田正馬と女子体操教育に賭けた藤村トヨ』(寺田和子, 1997(白揚社))という本が出版されています。図書館の小冊子「LiVRE(リーブル)第16号」でも、私がこの本を紹介しています。本学の歴史に思いを馳せながら、この本をぜひ読んでみてください。
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