令和5年4月3日(月)、藤村総合教育センターにて『令和5年度 東京女子体育大学・東京女子体育短期大学　入学式』を挙行いたしました。本年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止と皆様の安全を考慮し、規模を縮小して、入学生及び学校教職員のみで執り行いました。また、入学式の模様をインターネットにてライブ配信いたしました。
大学 体育学科 263名、大学3年次編入学 11名、短期大学 保健体育学科 13名、こどもスポーツ教育学科 36名、合計 323名の新入生を迎えました。

　新入生の皆さん、入学おめでとうございます。大学進学に向けて一生懸命に取り組んできたことと思いますが、その努力に対して敬意を表します。

　また、温かい愛情を持って皆さんを支えてこられた、ご家族の方々をはじめ、関係するすべての皆様に心よりお祝い申し上げます。

　さて、本学園の歴史は古く、その創設は明治35年（1902年）で、明治、大正、昭和、平成、令和とその歴史を刻み、昨年5月10日で、学園創立120周年を迎えました。この120年の歴史といっても、単に数字を知っていても意味がありません。明治35年に自分がタイムスリップをして、その時代にいることを想像してみてください。空を見上げれば、まだ飛行機などは飛んでいないし、今便利に使っているスマートフォンなどはなく、皆が見たことがあるような黒電話ですらありません。電話を掛けるにも、ダイヤルもなく交換士に電話番号を伝え、電話を繋いでもらっていた時代です。こうして、想像を膨らませることで、よりその歴史の古さが実感できると思います。その時代に、女子だけの体育教師養成学校としてスタートしていたのですから、その努力や苦労は計り知れません。
いま現代社会に求められているのは、単なる知識の蓄積ではありません。インターネットが普及し、記憶しておかなくても、なんでもすぐに調べられるし、道に迷えば自分の現在地が地図上に示されます。むしろ、正解がない問題に向かいながら、いかに創造力を働かせ、解決に向かうかという「探究の論理思考」が求められているのです。

　このように長い歴史に支えられている本学ではありますが、コロナ禍は、まさに想定外の出来事です。その中で、あなた方が高校に入学したときは、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、学校が臨時休校となるなど危機的な状況だったと思います。少しずつ以前の日常に近づいてきましたが、まさに高校生活3年間丸ごとコロナ禍で過ごしたのが、今年の入学生だと思います。
ちなみに本学では、当時、大学への入構も禁止せず、クラブ活動も感染対策をすることで許可をしていました。よそからの批判はありましたが、コロナ禍ではどんな対応も、「正解でもあり」「正解でもない」状況ですから、本学は学生教育を中心にこのような決断をしたわけです。幸いクラスターが出ることもなく、現在までこのような対応をしています。
このコロナ禍で、通常の高校生活とは違ったことを残念がる声はあると思います。しかし、振り返って悔やんだところで前に進むことはできません。むしろ「当たり前が当たり前でなくなる」コロナ禍を振り返って、そこで得た経験をしっかり捉えて欲しいと思います。
例えば災害で電力が遮断されると、スマートフォンが使えず、暖房や冷房が使えなくなります。そこで、いかに当たり前という常識の中で私たちが生活していたかが分かります。コロナ禍も同じで、人と直接会えることが当たり前だから、ビデオ電話が便利だと思っていたわけです。パーテーション越しで会話もせずに食べる食事は、味は同じでも、おいしいものではありません。

　こうして、特に今年の入学生は、人との接触を断たれ寂しい思いをしたかもしれませんが、そこでは改めて人と直接会うことの大切さを学んだと思っています。コロナ禍がなければ、自粛生活がなかったら、このような感性は決して磨かれなかったのではないでしょうか。むしろ、多感な高校時代にコロナ禍で磨かれた、この感性を大切に、今後は、スポーツに限らず、何事にも挑戦してみてください。
多くの仲間と知り合い、多くの考え方を学び、試すことで、失敗や成功の経験を積み重ね、「一生ものの姿勢」を築き上げ、素晴らしい人間として成長することを期待しています。入学おめでとうございます。