はじめまして。公開講座を担当した本学教員の渡邊 洋 です。こどもスポーツ教育学科の「図画工作科教育法」などを担当しております。専門は、木版画となります。
今日の主役は、近隣にお住いの小学生の皆さんです。大学で小学生が学ぶ機会ということで、とても楽しみにしておりました。公開講座では、ここ数年「野菜」をモチーフにしています。大学生の授業では、植物を題材にして和紙に写実する演習をしますが、たっぷり時間を使った活動がなかなかできない中、今日は3時間という時間を過ごして学べる貴重な機会でした。
対象を手に持って描いてもらう形式には、作者自身が描きたいものを選べる良さがあると思います。手で持つということは、立体的に捉えて良く観察できるからです。日頃食べている野菜で、調理された姿やその味わいなど豊かに経験していると思います。調理される前の野菜に触れて、どこでどのように大きくなり、私たちの手に運ばれてくるのか、いま勉強していることも関連してくるでしょう。
描くことは、自分なりに形や色で楽しむことです。描く内容も、目の前にある状態ばかりではなく、育んだ自然環境や農業生産など想像しやすいと思います。この活動に提供してもらった野菜は21種類で、それぞれを手に取って回転させながら見ると、種類ごとに色は似ていますが同じ形が無いことが良くわかります。もっとよく見ると、ニンジンの肌にも根っこの生えていた場所は白っぽいですし、凹凸のあるところには暗く筋が見える。人によって観察して得る気づきが異なるから、選ぶ野菜や見る角度、描く形や色にも、気づいて得た内容が反映します。
水彩絵の具で描いていると、難しいと感じることがあると思います。何かに気付いて、楽しめる手掛かりが増えると良いかなと。
私が幼い頃に、小学校で水彩絵の具を使うのがとても楽しかった想い出があります。それは未来の世界を想像して描く空想画でした。その時は、近未来の飛行場を描いていて、グレートデギンのような飛行機を描き、絵の具を工夫して、カラフルな細かい形を描き込んだ絵でした。絵の具の手ほどきを受けて楽しむコツを学んでいたんだと思います。当時、僕には見えない色を先生が使いこなす様子が記憶に残っています。絵の具を扱う感覚は、児童期に身に付いたなと振り返ります。
実演して工夫するポイントを伝えたことで、試すきっかけにしてもらえたかなと受け止めています。
1枚目は鉛筆だけで、2枚目は絵の具を使いじっくり描きました。1枚目の紙は小学校で使う4つ切りの画用紙です。いつも使う画用紙の中で、少し大きめのサイズですね。2枚目の紙は、ハーネミューレという厚いしっかりした紙で、大きさは八つ切り相当です。鉛筆は三菱uniの2Bに練ゴムを準備しました。絵の具は、ホルベイン社の water color 12色セットを使っています。筆は、小学校で使い慣れているだろう馬毛を数種類、8号、6号など使うことを勧めました。12号は水を運ぶ筆として勧めています。中盤以降は、面相筆とナイロン(ラウンド)筆の細いものを紹介して実演し、線描に使うことを勧めています。
筆の扱いについていくつかアイデアを伝えて、中学年以上の人はそれに対応しましたが低学年の人は自由でしたね。自由な使い方も、それでいいと思います。水をうまく使うことと、形を描くことは、異なる筆の扱いを効率よく組み合わせることなので、複雑だと思います。ゆっくり楽しみながら経験を見守ることで、技能が深まってゆくでしょう。
これも中盤以降の活動風景ですが、参加者が使用した絵の具と同じホルベイン社 water color のフルラインナップをサンプルで準備していて、興味のある人に自由に使って描いてもらいました。
2023.06.19
2024.04.24
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