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キャンパスライフ

卒業生に向けた学長メッセージ:建学の精神にある「質素」の意味とは

記事公開日:2025.03.26

令和7320()、藤村総合教育センターにて『令和6年度 東京女子体育大学・東京女子体育短期大学卒業式』を挙行いたしました。
大学 体育学科 292名、短期大学 保健体育学科 12名、こどもスポーツ教育学科 36名、合計 340名の卒業生が新たな希望を胸に巣立っていきました。

【学長 式辞】

卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。これまでの皆様の努力を讃えるとともに、本日まで立派にご息女を育ててこられた保護者の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。

本学の創立は、明治35年(1902年)ですが、既に120年以上の歴史を重ねています。歴史を振り返れば、本学は開学当時から制服を着用しており、明治42年には授業中にも制服の着用を義務づけていた記録があります。私がこの大学に着任したときも、授業中の服装は自由ですが、黒の制服での入学式、卒業式が行われていました。その後、紺のブレザーで金ボタンの制服に変わりましたが、就職活動などで利用できない理由から、現在はリクルートスーツとなった経緯があります。昨年の卒業式は、全員リクルートスーツでしたが、今年は式典にふさわしい服装であれば自由となり、昨年とは異なる雰囲気に戸惑っているところです。

今年は昭和100年と呼ばれ、昭和の良いところも見直しながら、令和をどう生きるかというようなことが話題となっています。本学の建学の精神は「心身ともに健全で、質素で誠実、礼儀正しい女子体育指導者の育成」ですが、まさにこの言葉を忠実に守ってきたのが制服なのかもしれません。しかし、建学の精神という伝統は形式を伝えることではなく、その時代に適った形で、その精神をつないでいくものです。例えば「質素」と言えば、何か飾らないことで、素朴なイメージを持ち、派手な衣装を着ることを戒めるような気がします。しかし、そこには「おごらず、つつましい」という意味もあり、「思い上がって、わがままな振る舞いをしない」ということでもあります。その意味であれば、あなた方は本学で体育・スポーツを通じて「思い上がってわがままな振る舞いをすれば、決して上達しない」ことを体得したと思います。こうして、建学の精神を体得したあなた方の服装は、その努力の成果として、まさに式典にふさわしい服装であれば自由であるべきだと思います。こうして昭和100年を機に、学生部が中心となって、教職員協力のもと、卒業式を新しい形に変えてくれたのです。

さて、「人間」という言葉は、仏教とともに中国から入ってきたのですが、そこでは本来「世の中」「世間」を意味していました。しかし、仏教の書物を訳しているうちに、日本では一人一人の人間のことを表す言葉として誤訳されたようです。それが違和感なく受け入れられたのは、日本人は「人と人のあいだ」を極めて大切にする文化をもっていることが理由のようです。東京オリンピックでも「おもてなし」という言葉が注目されましたが、日本人は他人を思いやる気持ちを強く持つ文化をもっています。その中で、コロナ禍は他人との接触の自粛が求められ、「人と人のあいだ」が作りにくくなってしまいました。コロナ禍のあと、「友達の作り方が分からない」など色々な影響が出てきたようです。世の中には多くの人がいて、その人たちとの関係を保ちながら、社会が形成されますから、その関係を避けては通れません。ラインやメールなどで繋がっていても、結局は文字という記号を通しての「人間関係」でしかありません。そこでは、「相手は、本当は何を考えているのか」という他人の気持ちは想像するしかありません。しかし、直接会話することは、このようなことを一気に乗り越えることができます。さらには、何も語らなくても相手の考えていることが分かることもあります。つまり、人と直接会って会話することが、人間関係をつくっていく上で極めて大切なことなのです。

これからあなた方は、新しい夢の実現に向かって羽ばたいていくと思いますが、夢は自分一人では叶うことはありません。自分一人、つまり「人」が「夢」を見ることを、漢字一文字で表せば人偏に夢と書くことになります。それは「儚い」という漢字になってしまいます。つまり、一人で考え結論を出して夢を見ることは、儚い夢となりその実現は難しくなってしまうのです。

大学に入り、多くの友達ができたと思いますが、その友達や教職員との関係を大切に、また新しい環境で、体育大生のコミュニケーション能力を発揮し、多くの人と直接語り合い「人と人のあいだ」を沢山作り、素晴らしい人間に成長してください。

そして、何か躓きそうになったら、また、何か嬉しい報告でもあれば、是非大学に顔を出してください。卒業後は、今までお世話になった教職員は、大学時代の仲間として親身に相談に乗ってくれます。頑張ってください。皆様の活躍を期待して、式辞といたします。

卒業おめでとうございます。

令和7320
東京女子体育大学
東京女子体育短期大学
学長 金子 一秀

卒業式ダイジェスト(動画)

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