各種スポーツについて、バイオメカニクス的観点からの科学的な理解を深めています。バイオメカニクスという学問は、大きく分けてキネマティクス(運動学)とキネティクス(運動力学)の2つの観点に、筋へのエネルギー供給(スポーツ生理学)や関節構造(解剖学)などを加え、身体運動を解明するものです。
この領域での理解が深まれば、自身が経験したことのないスポーツであっても、その動きを見ることで、どの筋がどのように活動しているかが類推できるようになり、自身の競技力向上だけでなく、スポーツの指導にも役立つものになるのです。また、近年では球技種目のゲーム分析なども、バイオメカニクスの研究対象となっていますね。
ゼミナールでの指導は、スポーツの動きそのものに興味を持ち、また、それを物理学的・客観的に説明することを面白いと思ってもらえるよう、探究心をくすぐるようにしています。
3年次では各自のテーマ(スポーツ種目等)を決め、その分野の先行研究(研究論文)の要点をまとめ、15分程度のプレゼンテーションと質疑応答を行います(抄読会)。自身の興味あるテーマでなくとも、他者のプレゼンテーションに耳を傾け、質疑することで、幅広いスポーツ種目についての理解を深めます。また、実験実習などにより、研究に対する考え方(客観性)やまとめ方(統計処理・考察)の理解を深めていきます。
4年次前期では、画像解析法の基礎を学ぶとともに、卒業研究に向けた実験準備(実験のデザイン・予備実験)を行います。卒業研究では、スポーツ場面の画像解析や筋電図解析による動作分析を主なテーマとし、実験とデータ処理を行い、論文執筆に取り組みます。
学生時代は「スポーツ医学研究室」に在籍していましたが、卒業論文や修士論文で「やり投げ選手の肩関節障害」を、バイオメカニクス的手法によって分析したのがきっかけで現在の研究につながっています。学生には自分の授業やゼミナールを通して「スポーツ動作の客観的理解」を深めてもらいたいですね。また、ゼミナールでは、競技場面の撮影のために機材を持って川や雪山(カヌーやスキー)に行くこともあります。実験には多くの時間と人手を必要とするため、ゼミナールの仲間の協力(グループワーク)が必要となり、チームワークの良いゼミとなっています。
若山章信
東京女子体育大学 体育学部体育学科 教授
筑波大学大学院 体育研究科 健康教育学専攻 修士課程修了[体育学修士]
東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系 博士課程修了[博士(学術)]
2023.06.19
2024.04.24
2024.06.15