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研究・教育

ゼミナール特集: 本質をとらえる思考

記事公開日:2024.11.15

TWCPE注目ゼミ 武藤伸司ゼミ 身体性哲学

当たり前が当たり前じゃないことへの気づき

 幼いときかから「私は誰?」「どうやって世界は成り立っているの?」「どうして人は分かり合えないの?」という答えの出ないことを考える変な子どもでした。こうしたことを真剣に考えるのが哲学という学問だと知って、それについてずっと研究しています。その中で、それらの問題の中心にいつも「身体」があったので、現在では身体の本質を巡る哲学を研究しています。

 私の授業やゼミのキーワードは、「言葉」です。人は何をするにも言葉で考え、言葉で人に伝えます。もちろん、言葉以外のイメージやジェスチャーなどの伝え方もあります。しかし、どんな勉強も仕事もスポーツも、言葉を用いずに成り立たせることは困難です。そのため、言葉を大事にする、言葉を操ることを学ぶことが必要です。簡単そうに見えて奥深いこの学びに、徹底的に触れ合うことを目標にしています。

 哲学は万学の祖ですから、スポーツに関わっていれば、どんな問題意識でもゼミでは扱うことができます。強い問題意識をもって、その問題の本質を言葉で明確にしていくことを求めます。

武藤伸司先生著の「力動性としての時間意識」

図書館1階本学関係資料コーナーで閲覧できます

本質にたどりつくための頭の使い方

 授業もゼミもしっかり文字を読んでしっかり文字を書くことを重要視します。どんな問題の解決もここから始まります。もちろん、体育大学ですから、競技力向上や指導力の向上を目指しますが、それにかかわる言葉を覚え、自分のものにすることを重視します。人は頭でいくら考えていても、それをアウトプットしないと本当に自分のものにはできません。自分のものになっていないものを人に伝えることはできませんよね?この点を受講生のみなさんには何度も問いかけて、「自ら考える」という主体性を持ってもらえるような授業をしています。その意味で、ゼミでは特に、この本質を外さなければ、どんなテーマでも受け入れます。

 ゼミの学生は、毎年同じような感じで、部活に一生懸命な人と、部活には所属していないでそれ以外のことで頑張っている人と、半々くらいです。良くも悪くものんびりしていて、穏やかなゼミだと思います。私の性格のせいかもしれません。
たいてい、ゼミのときは、みんながそれぞれあれやこれや勝手にしゃべっていて、話題があっちこっちに飛びながら、自分たちの考えを言い合っているというような様子です。

 ゼミでの特徴的な活動というものは、ほとんどありません。たまにみんなで図書館に行くことがあるぐらいです。あるとすれば、とにかく対話を重視することです。まずは、自分の考えていることを吐き出す。ゼミ生同士もそうですし、特に私との対話の中で、それぞれが持っている問題の本質を見つけ出したり、落としどころを調整したりしています。これは哲学をする上での、基本的な態度です。相手の前提や条件を相互に尊重し、意見をしっかり伝える。特に、「質問する」ということが大事です。質問することで、自分も相手も知ることができるようになります。

女性リーダーとしての強み

 女子大学であり、体育大学である本学は、これらの特殊な条件が前提としてあります。この価値をいかに学生たち自身が強みにしていくか、ということに焦点を当てなければなりません。社会のニーズという意味では、女性活躍社会もスポーツ振興も日本全体の大きな課題です。そんな中、女性と体育、スポーツという価値をかけ算して出てくる答えは、人を育てて率いていくリーダーとしての資質を養うこと、これに他なりません。これを実現するために、女性が言葉をしっかり操り、それをもってどんな人とも和やかに対話することができれば、きっと多くの問題が解決できると考えています。

 というわけで、私の授業やゼミから身につけてもらいたいことは、言葉で対話していく上での作法です。これが身につけば、たいていの問題の本質が明らかになり、それがはっきりすれば、問題にかかわる人全員がそれに向かっていくことができるようになります。本質はいつでもどこでもだれにとっても変わらないものです。これを手に入れれば、迷わず進めます。女性リーダーとして迷わずみんなを率いていくために、ぜひ本質を見つける思考を徹底していきましょう!

武藤伸司、1983年、福島県生まれ
東京女子体育大学体育学科准教授
東洋大学大学院文学研究科哲学専攻修了 博士(文学)
主要学科目は身体学、探究の論理

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