特別活動とは、高校でいえば、ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事を指します。国語や数学などの学習教科に対して、「特別な活動」というわけです。
教師として高1年生の担任になると、4月の委員会や係決めの時間に、勤めている学校にはどういった行事があって、各委員会にはどのような仕事と役割が求められるのかを、生徒に「分かる言葉」で説明しなくてはなりません。
また、クラス分けされた生徒たちが、行事などに向けて目的意識をもつ集団になるには、一人ひとりに対する生徒理解と言葉かけが必要でした。実際に指導する学年担任の方針や生徒集団の特質によって、その教育的成果が変わってくることがあります。そこで在職中からさまざまな研修会に参加して実践を省察するうちに、教育の意義について改めて問い直したいと考えたのが研究のきっかけでした。
授業ではまず学生に、高校までの学校生活で特別活動や総合的な学習(探究)の時間の活動内容を思い出してもらいます。隣の学生同士が情報交換すると、当たり前だと思っていたことの違いに驚く声が上がります。小・中でも体験し、どの学校でも実施しているのですが、正式な教科書や定期テストがないのと、コロナ禍の影響で、やったという実感が薄い部分もあるようです。
ゼミでは研究の理由(動機)についてじっくりと時間をかけて考えてもらいます。学生と対話を重ねるうちに、生徒時代に疑問に思ったというエピソードがいくつか出てきます。それがこの研究を通して取り組むべき課題かもしれません。ですから仮に同じ研究テーマを選んだ学生同士でも、研究の方法や考察や結論が違ってよいのです。
特別活動の指導法や総合的な学習の時間の指導法では、前半がそれぞれの学習指導要領の講義と解説、後半が実践的な演習を取り入れています。たとえば、特別活動の指導法では保護者会で配付することを想定したクラス通信を作成します。総合的な学習の時間の指導法では、そもそも学校ごとに探究課題が異なりますから、どのようなテーマでも対応できる発想法を学びます。また、図書館に開架されている新聞を活用して汎用性の高いNIE教育(Newspaper In Education)の体験をします。具体的には、新聞の朝刊を隅々まで読んで記事を選び、それを使ってワークシートを作成し設問と児童生徒の解答例を考えました。そこには学生の個性が具体的に表れており、一つとして同じ成果物はありません。生徒指導論では問題行動の事例を「指導」と「支導」の観点を加えて取り上げ、学生間で意見交換やロールプレイングを積極的に取り入れています。
ゼミの4年生に対しては、夏休み中に集中して個別指導を行ってきました。研究テーマは学校行事や学級経営、いじめに関する分野などです。人材育成の観点から、学校教育におけるリーダーシップや性差による集団の構造について研究する学生もいます。
研究テーマを深める上で、現場の先生や生徒にアンケート調査を実施する場合があります。あるゼミ生が小学校の先生に、班分けの指導法に関するインタビュー調査のお願いをしたところ、「(学生にしては)珍しいテーマだね」と言われたそうです。それは、日頃児童を指導する教師の立場から、研究に関心をもって下さった言葉だと思います。
3年生は夏休みに関心のある書籍をまとめ、順番にスライドを用いて発表しています。全員がそのテーマに向かい合い、積極的に意見を出し合っています。
本学には全国から学生が集まってきています。また、複数の学年が受講する授業もあります。その中で自分の意見を言ったり、グループディスカッションをしたりするには、正直なところ勇気が要るものです。ですから、誰でも最初は初心者だ、ということを意識して対応しています。また、身体能力を高めるために日々努力を積み重ね、かつ授業にも強い意志で学ぼうとする学生たちにはリスペクトの気持ちを抱いています。
本学は体育大学ですから、授業のすべてが「からだとこころ」に働きかける内容だといえるかもしれません。とりわけ教職課程における体系的な学びやゼミの研究対象が人間とその教育ですから、高校までの学校生活や、友人・家族といった人間関係を振り返り、新たな発見や価値付けをすることにつながります。ここで得た知識や研究したことは、社会人になって出会う人たちを理解するための強力なアイテムとなるのではないでしょうか。
最後に、かけがえのない学生生活の経験を通して、あなたの周囲の人々と、よりよい人間関係を結んでいってほしいと願っています。
小西悦子、1962年、東京都生まれ
東京女子体育大学 体育学部教授
学習院大学大学院人文科学研究科 博士前期課程修了(教育学修士)
主要学科目は特別活動の指導法、総合的な学習の指導法、生徒指導論
2023.06.19
2024.04.24
2024.06.15