高校生のとき、サッカー日本代表チームが初めてのW杯出場を賭けて戦う様子を必死に応援していました。後になって考えると、なぜあそこまで赤の他人に過ぎない日本代表選手たちに強く肩入れしていたのか不思議に思い、スポーツとナショナリズムの問題について考えてみたいと思ったのがきっかけです。
ゼミナールでは、大学生活の総仕上げとして卒業論文を執筆します。1万字を越える文章を書いたことのある学生がほとんどいない中で、テーマ決め、文章の書き方、そしてプレゼンテーションの仕方などを一から指導します。そして、自分だけのオリジナルな面白い卒業論文を書き上げることが最終的な目標です。
スポーツ社会学の授業では、社会学というものの見方からスポーツを捉えます。
社会学という学問は、社会における「当たり前」を疑う学問です。例えば上記のように日本人が日本代表選手に強く肩入れしてしまうという「当たり前」を疑うこともその一つですし、他にはなぜスポーツの指導の場では「体罰」が容認されてしまうのかや、プロスポーツクラブの運営に貴重な税金が投入されるのはなぜなのかなど、スポーツにまつわる様々な「当たり前」を疑ってかかっています。
部活動にバリバリに取り組んでいる学生もいますが、どちらかというと部活動よりも勉強をがんばりたいという学生が多いです。そういう学生には、部活動に燃える代わりに「自分は大学生活で卒業論文をがんばった!」と胸を張ってもらいたいと思っています。
授業では、毎回の冒頭に問いを提示するようにしています。例えば「なぜスポーツの世界では「体罰」が認められてしまうのでしょうか?」のように。明確な問いがあってこそ、その問いに答えるというゴールに向かって話を組み立てていくことができます。これは卒業論文でも同様で、良い卒業論文を書くには良い問いを立てることが何より大事です。論理的に物事を考えること、そしてそうして考えた内容を的確にまとめ、他人にしっかり伝えること。こうした力は、社会人になってとても重要な能力です。
笹生心太 1981年 埼玉県生まれ
東京女子体育大学 体育学部体育学科 准教授
一橋大学大学院社会学研究科 博士(社会学)
担当科目はスポーツ社会学、社会と人間、レジャー・レクリエーション概論
2023.06.19
2024.04.24
2024.06.15