東女体大出身の中・高の恩師(体育の先生・部活の顧問)から、体操競技の「振り付け」の面白さを学び、東女体大に入学するきっかけを作っていただきました。そして入学した東女体大で、山田まゆみ先生(※)のゼミに入り、体操競技の本質や「芸術性」について触れ、自分の価値観が一変していきました。体操競技を続けていく中で、怪我で苦しんだり、技ができないといって苦しんでいる時間が長かった私にとって、ゆかや平均台の「振り付け」について考える時間がとても楽しく、体操競技の新たなる魅力に惹かれていきました。しかしながら、あまり研究がされていない分野ということもあって、研究活動には今も苦戦していますが、体操競技の魅力は技だけではないということを伝えたいという一心で現在も「芸術性」に関する研究に取り組んでいます。
※当時、器械運動研究室に所属されていた教授。本学卒業生。
私のゼミでは、体操競技を軸として、採点競技の意義を考えながら競技特性や歴史、用語などの理解を深めていきます。器械運動・体操競技を学べるゼミは他にもありますが、私のゼミでは特に「芸術性」について深く考え、自分の個性と向き合うことを大切にしています。技のしくみだけでなく、演技全体を捉え、いかにして自分のパフォーマンス力を上げていくのかを考えていきます。ディスカッションを通し、各々の“らしさ”についても共有することで、自分らしい演技を追求することを目指していきます。
ただし、体操競技の芸術性というテーマはなかなかマニアックなので、もちろん小・中・高の器械運動の指導法や、幼児の運動の発達についても考えて、体操競技部以外の学生には、その学生の考えたいテーマをもとに活動しています。
普段は、器械運動の実技授業を担当していますので、各種目の技と向き合いつつ、自分なりの「できる」の幅を広げるお手伝いをしています。先生は必ず絶対的な答えを持っているというわけではありません。運動のコツはほんとに人の数だけあると思っています。技のしくみについてを共有し、その中から自分なりのコツを見つける時間を多く作り、技の「できた」の幅も広く設けることで、自分なりのコツや「できた」を増やせるよう授業を展開しています。
現在のゼミの3年生は、惜しくも第一希望や第二希望に落ちてしまい、私のゼミにやってきた学生や、器械運動とは全く無縁な学生も在籍しています。その中でも、ディスカッションを通して、相手を尊重しつつ個性豊かに活動しています。中には、人生で1回で良いからバク転をやってみたいという学生もいて、バク転の仕組みや、素人でもできるバク転のやり方について考えている学生もいます!
また、公園へ行き、遊具で遊びながら運動について考えたりすることもあります。ブランコのこぎかた、今自分の感覚を思い出せますか??幼児に教える時はどんなことを教えるのか、それとも教えなくていいのか。そんなことをテーマに遊びを通して学んだりしています。
「芸術性」の研究を始めてから、私は“個性”についてよく考えるようになりました。個性を押し殺している学生や、本来もっている素晴らしい個性に自分でも気付いていない学生も多くいるということに気付かされたこともあります。ですので、どのようなテーマを扱うにしても、「本来やりたいこと」や、「自分は何に興味があるのだろう・・・」といった、自分の声を大切にすることを意識させるよう心がけています。
とにかく、まずは自分自身としっかり向き合ってほしいと思っています。そして同じように仲間を尊重し、相手がどう考えているのかや、何に対して「できない」と苦しんでいるのかを感じ取るアンテナをはれるようになってほしいと思っています。器械運動や体操競技では「できる」「できない」が明確にみえるため、単に「できるから良し」ではなく、「できない」世界にも触れ、同じように悩んでいくことで、相手を思いやる気持ちを養っていってほしいです。
井上麻智子
東京女子体育大学・東京女子体育短期大学 講師
東京女子体育大学体育学部体育学科 卒業 体育学士
日本女子体育大学大学院 修士課程修了 スポーツ科学士
専門は、器械運動、体操競技
担当科目は器械運動Ⅰ、器械運動Ⅱ、体育Ⅱ
2023.06.19
2024.04.24
2024.06.15