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研究・教育

ゼミナール特集: 運動習得の不思議に問いかける

記事公開日:2025.10.21

TWCPE注目ゼミ 渡辺博之ゼミ 器械運動・体操競技・スポーツ運動学

ゼミ所属学生の卒業研究テーマ(参考例)

・体操競技における技の動感消滅現象に関する運動学的考察
跳馬の助走における踏み切り技術の構造に関する運動学的考察
・歴史身体におけるメロディー化能力の発生に関する運動学的考察

初めて「できた」嬉しい瞬間

 初めて技が「できる」ようになった瞬間は大変嬉しいものです。マグレでできたことに飛び上がって喜びたくなります。でも、せっかくできたと思ったらすぐにできなくなってしまいます。また、当たり前にできると思っていた技が突然できなくなることもあります。どうしてだろうと悩んだ経験は皆さんにもあるのではないでしょうか。運動習得は、一度「できる」ようになるとそれが半永久的に身につくわけではないのです。これはどのスポーツで動きを覚える場合も共通しています。練習では「できる」「できない」を繰り返しますが、その深層を探っていくと、そこに「コツ」と「カン」の不思議な世界が広がっていることに気づかされます。「できる」と「できなくなる」ということは、いつも運動の感覚や意識をめぐって背中合わせになっているのです。

 このゼミでは、学生が取り組んできたスポーツの経験から、「どうしてそうなるのか」という問いを立て、その不思議な感覚世界をスポーツ運動学という学問から研究し学んでいます。

連続写真を作成して技術ポイントを分析

卒業研究に真剣に取り組む

先輩たちの研究を読み込む

 3年生では、学問分野を問わず先輩たちの卒業研究を輪読します。その人がどういう問題意識をもってテーマを決めたのか。あるいはどういう分析方法によって結論を導き出しているのかなど、文書構成や研究の手立てをディスカッションしながら学びます。その活動を通して自分の問題意識やテーマを熟成させていきます。4年生では、各自の問題意識に従って結論を考えプレゼンを繰り返します。またその過程のなかで、結論を証明するための道筋を練り、卒業研究を作成していきます。

 このゼミには、いろいろなスポーツの経験者が集まってきます。始めはお互いを知らないので静かですが、次第に打ち解けて賑やかになっていきます。4年生後期には卒業研究発表会で研究内容をプレゼンしますが、その時にはかなりの分析力と知識を身につけています。

難しい専門文献を読み込む

自らの経験を深く分析することが他者の理解と結びつく

 このゼミでは、自分がこれまで慣れ親しんできたスポーツの経験を自己分析することが中心になります。その際、心と体を分離せず「動きながら感じ、感じながら動く」身体として分析するというスポーツ運動学の立場から研究していきます。そこで大切なキーワードが「感覚意識」です。動きを練習する際によくイメージすることですが、当たり前すぎて深く考えることなくやり過ごすことも多いように思います。でも、そのことを学問の知恵を借りながら考えていくと、運動習得に欠かすことのできない「運動リズム」や「運動メロディー」という現象の意味がわかったりします。まさに自分の経験の探究です。そういった分析力を養うことは、また他者の動きを観察し指導するときの能力に反転する可能性をもっています。

 学生の皆さんには、自分が好きでやってきたスポーツの経験を出発点として、そこからもう一歩深く切り込める分析力をぜひ身につけてもらいたいと思っています。それは将来、どんな職業に就くにせよ、他者を理解するということにもつながると思います。

渡辺博之 1962年 島根県松江市生まれ
東京女子体育大学・東京女子体育短期大学 教授
筑波大学大学院 体育研究科 コーチ学専攻コース修士課程修了 (体育学修士)
専門は、スポーツ運動学、器械運動、体操競技
担当科目は、器械運動Ⅰa・b、体操競技コーチング論及び実習、スポーツ技術論、体育実技指導研究

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