人の行動について「どうして?」と疑問をもち、自分や他者を「知りたい」という思いが、臨床心理学を学ぼうと思った出発点です。教育相談では、保育・教育現場の子どもや保護者を支援対象とします。特に悩みや問題が生じた際には、起きていることの背景や意味を想像することが求められます。そして、子どもや保護者への理解が深まり、相手に寄り添った支援につながることが、支援者としての“やりがい”であると感じています。
授業やゼミナールでは、子どもや保護者への理解を深め、具体的な支援方法を学んでいます。主要なテーマは、不登校、いじめ、発達障がい、児童虐待などです。人を理解しようとするとき、理解する主体は自分自身です。そのため、自分自身についての理解を深めることも重要です。保育・教育現場での様々な問題は、自分の生活の延長線上にあるものであり、自分事として自覚をもって捉えられるように取り組んでいます。
ゼミではロールプレイング(役割演技)で面談の擬似体験をする時間を作っています。事前に子どもや教員などそれぞれの役の気持ちや背景などを確認し、どの役も体験します。どの役にもなってみることで、様々な立場の視点を理解することができます。また観察者役も置き、客観的に面談を評価してフィードバックします。言葉だけではなく、姿勢、表情、視線、ジェスチャーなど、全身でどう相手に向きあうかを具体的に体験します。
また、学生が物事の捉え方、考え方、感情など、自分自身の特徴や傾向を知り、自己理解を深められるように、ワークなどを取り入れています。そのうえで、保育・教育現場で起こる具体的な事例を取り上げて、支援方法の学びを深めます。
3年生のゼミナールでのグループワーク
その際に、学生ができるだけ実感をもって身近に捉えられるように、映像資料を用いたり、事例検討やグループワークを実施したりしています。学生同士が活発に意見を出しあえることを目指しています。
人の不快な感情や悩みを課題として扱うため、楽しい話題ではありませんが、学生はテーマについての様々な意見を出しあい、熱心に学んでいます。1つの正解があるわけではなく、多様な見方・捉え方が求められるため、自分の意見も他者の意見も尊重しながら、視野を広げられるよう、お互いに意見を共有しやすい雰囲気を大切にしています。学生それぞれの個性がよく表われていると思います。
4年生の卒業研究発表会
ゼミや授業の中で、学生のよさや強みを見出して注目し、学生自身が自分のよさや強みに気づけるように促したいと思っています。また、ワークなどで学生同士が意見を共有していく中で、他者のよさや強みにも気づけるような活動を心がけています。保育・教育現場で、子どものよいところをしっかりみることのできる力につなげてほしいです。
人にはそれぞれに癖があり、同じパターンを取りがちです。それは個性でもあるわけですが、別の行動や考え方を試みることで今まで自分になかった視点に気づくことができます。その結果、自分自身の見方や考え方を広げていくことにつながります。学生には授業やゼミでの学びを通して、自分も他者も大切にし、多様性を尊重しあい、しなやかに心地よく生きていく力を身につけてほしいです。
田島真沙美、東京都生まれ
東京女子体育大学・東京女子体育短期大学 准教授
東京学芸大学大学院教育学研究科修了、修士(教育学)
主要学科目は教育相談、子育て支援
2023.06.19
2024.04.24
2024.06.15