学長挨拶

歴史と伝統を大切に、新たな挑戦を。
本学は明治35年(1902)に創立され、2022年には創立120周年を迎えます。実質的な創設者、藤村トヨの掲げた建学の精神は「心身ともに健全で、質素で誠実、礼儀正しい女子体育指導者の育成」です。明治、大正、昭和、平成、令和と時代の変化に即して、本学は建学の精神を守り続けてきました。本学では、体育教師の育成はもちろんのこと、体育・スポーツを通した教育によって、社会を牽引する女性リーダーの知を育んでいます。現代社会においては、まだ女性のリーダーは決して多くありません。そこに切り込むべきリーダーとしての資質に、日本の世界的経営学者は〈仮説推論(アブダクション)〉という〈知〉が必要といいます。
体育・スポーツを学ぶには、運動技能の習得が不可欠です。自分の身体を駆使して運動技能を習得する過程では、失敗の経験を生かしながら「どうしたらうまくできるか」という新たな発想が求められます。自分の身体を動かす新たな発想を生み出せなければ、この世界では前に進めません。「できる」という新たな技能の習得には、気づかないうちに〈仮説推論〉という思考を使っているのです。だからリーダーに求められる〈知〉の育成に、体育・スポーツが重要な役割を果たすことができるのです。
一日は24時間で、それは誰にでも平等に与えられていますし、その時間をどう使うかは各個人に任されています。体育・スポーツに興味のある人は、運動技能を習得することに多くの時間を使います。その時間の使い方には、どれが正しいというよりも、その時間の使い方の価値を本人が捉えていることこそが重要なのです。
本学は体育・スポーツが好きで、それに時間を割いてきた人たちを応援しています。そこに新たな価値を与え、社会に貢献できる女性のリーダーを輩出するのが教育目標です。素晴らしい結果を出している人はもちろんですが、運動が苦手で動きを覚えることに苦労をしている人も、現代社会が求めるリーダーになれる資質を持っているのです。その知に磨きをかけさらに高度な知識を足していけば、現代社会が求める女性のリーダーとなれる可能性が広がります。その実例として、本学の卒業生には体育教師はもちろんのこと、全く別の分野で女性のリーダーとして活躍している人が多くいます。
本学では、自らが歩んできた体育・スポーツの道に自信と誇りを持ち、そこで獲得した〈知〉にさらに磨きをかけたい人を求めています。学生、教職員一丸となって、この教育目標を実現すべく努力を重ねています。ぜひ一度本学に足を運び、生き生きとした教育現場を見て感じてほしいと思います。